はじめに
昇格試験に不合格となった方から、次のようなお話を伺うことがあります。
「緊張して、質問にうまく答えられなかった」
「想定していない質問が出て、頭が真っ白になった」
いずれも、本番を振り返った本人の率直な実感です。ただし、次回に向けて何を見直すかを考えるときには、本人が強く感じた問題だけで判断しない方がよい場合があります。
緊張したから模擬面接を増やす。
その対策が必要なこともありますが、前回の質問や回答、会社からのフィードバックを確認していくと、別の課題が見えてくることもあるからです。
この記事では、本人が考えていた不合格の原因と、実際に振り返りを通じて見直した内容が異なっていた2つの事例をご紹介します。(個人が特定されないよう、業種・役職・時期などの情報は一部一般化しています。)
不合格後に、本人が感じた原因だけで対策を決めない
面接が終わったあとに思い出しやすいのは、言葉に詰まった質問や、うまく答えられなかった場面です。そのため、不合格になると「緊張が原因だった」「説明の仕方がよくなかった」と考えやすくなります。
もちろん、緊張や話し方が評価に影響することはあります。ただし、面接官が確認しているのは流暢に話せるかどうかだけではありません。
どのような問題意識を持っているか。
なぜその行動を選んだのか。
周囲にどう働きかけたのか。
昇格後は、個人の経験を組織の成果にどうつなげるのか。
回答の内容からこうした点も確認しています。
本人が「うまく話せなかった」と感じた場面にも、回答の構成、判断理由、上位職としての役割理解など、複数の問題が関係している可能性があります。
不合格後の振り返り方や、再受験までの進め方については、次の記事で全体像を解説しています。
👉 昇格試験に落ちたらどうする?不合格後の正しい立て直し方と再受験の進め方
事例1|緊張して回答がずれたと思っていたケース
本人が考えていたこと
1人目の相談者は、前回の面接で緊張し、質問に対してうまく答えられなかったことを気にしていました。
質問と回答がずれてしまった場面もあり、ご本人は、緊張と自己分析の不足が不合格につながったのではないかと考えていました。
会社から受けたフィードバックは、「質問の意図を考えること」「現場で行っていることを整理すること」という内容でした。
仕事上の実績が少なかったわけではありません。現場では、業務上の課題に気づき、周囲と協力しながら改善を進めていました。後輩への支援や職場をよくするための工夫も行っていました。
実際に振り返って確認したこと
前回の質問や回答を振り返ると、本人が行った工夫や成果については複数の経験を話せていました。
一方で、回答の中心は、自分が何を行いどのような成果を出したかという説明でした。上位職として周囲をどう動かすのか、職場全体をどのような状態にしたいのかという部分は、十分に伝わっていなかった可能性がありました。
会社からの「質問の意図を考える」というフィードバックも、聞かれたことに簡潔に答えるという意味だけではなかったのかもしれません。
面接官が確認したかったのが、昇格後の役割をどのように理解しているかだとすると、話し方の練習だけでは十分な見直しになりません。
そこで、緊張や回答のずれに加えて、現在の役割と上位職の役割の違いについても確認することにしました。
次回に向けて見直したこと
セッションでは、一般的な役割の説明にとどめず、相談者本人の職場に置き換えて考えていきました。
数年先に、どのような職場にしたいのか。自分が成果を出すだけでなく、後輩やメンバーの成長を通じて、職場全体の成果をどう高めるのか。
こうした内容を検討することで、これまでの経験を昇格後の役割と結びつけて説明しやすくなりました。
緊張への対策が不要だったわけではありません。ただ、緊張だけを原因と考えて模擬面接を繰り返しても、役割理解の部分は十分に変わらなかった可能性があります。
事例2|回答内容が薄かったと思っていたケース
本人が考えていたこと
2人目の相談者は、前回の面接について、本番で頭が真っ白になったと振り返っていました。
事前に回答は用意していたものの、想定する範囲が広すぎて内容が浅くなってしまい、面接官に充分伝わらなかったと感じていました。
会社からは、課題認識や課題解決の説明が不足している、質問に対して回答がずれる、アピールポイントが分かりにくい、説明力に改善が必要といった複数のフィードバックを受けていました。
指摘されている項目が多いため、本人にとっては、何から見直せばよいのか分かりにくい状態でした。
実際に振り返って確認したこと
実際の回答を確認すると、経験そのものが乏しいわけではありませんでした。取り組んだことや苦労した経緯については、多くの情報を持っていました。
ただし、行動や経緯を詳しく説明するほど回答が長くなり、何を伝えたいのかが分かりにくくなる傾向がありました。
また、「何をしたか」に比べて、「なぜそれを課題と考えたのか」「なぜその方法を選んだのか」という判断理由が弱くなっていました。
個人としての成果は見える一方で、その取り組みが組織にどのような影響を与えたのか、管理職になったあとにどう生かすのかという説明も不足していました。
そこで、単純に回答の情報量を増やすのではなく、優先して見直す内容を「回答の構成」と「上位職としての見方」に整理しました。
次回に向けて見直したこと
その後の対策では、まず本人の強みを実際の経験と結びつけて言葉にしていきました。
行動を時系列で並べるだけではなく、どのような課題を捉え、何を考えて判断し、誰にどう働きかけ、どのような結果につながったのかという流れで確認しました。
また、個人として発揮してきた強みを昇格後にどのように組織の成果へつなげるかも検討しました。
失敗経験についても、苦労した出来事を説明して終わるのではなく、そこからリスク管理や後継者育成の必要性に気づき、その後の仕事にどう生かしているかという形で捉え直しました。
このケースで必要だったのは、想定質問を増やしたりすることではありませんでした。すでに持っている経験から、判断理由や組織への影響を取り出し、質問に応じて説明できるようにすることでした。
2つの事例に共通していたこと
2人が最初に気にしていたことは異なります。1人目は緊張と回答のずれ、2人目は回答内容の薄さと説明力でした。
しかし、振り返りを通じて共通して見えてきたのは、個人としての経験や実績を、上位職に求められる役割と結びつけて説明することの難しさでした。
| 本人が気にしていたこと | 次回に向けて見直したこと |
|---|---|
| 緊張して回答がずれた | 現在の役割と上位職の役割の違い |
| 回答内容が薄かった | 判断理由と組織への影響 |
| 説明がうまくできなかった | 個人の実績を組織への貢献として伝えること |
| 想定質問への準備が足りなかった | 質問が変わっても使える経験と考え方を持つこと |
2人とも、仕事の実績や経験が不足していたわけではありません。
見直したのは、その経験の中にある問題意識や判断、周囲への働きかけを取り出し、上位職として何を担えるのかが評価者に伝わるように説明することでした。
この部分が曖昧なままでは、想定質問を増やしても、質問の表現が変わるたびに答えに迷ってしまいます。反対に、自分の経験と考え方を理解できていれば、すべての質問に対して回答文を用意しなくても関連する経験を選びやすくなります。
再受験では、練習を増やす前に前回の回答を振り返る
昇格試験に不合格となったあと、早く準備を始めなければと焦る方もいます。
しかし、最初に必要なのは、想定質問を増やすこととは限りません。まず、次の情報を分けて振り返ることが大切です。
- 会社や上司から受けたフィードバック
- 実際に聞かれた質問
- 自分が答えた内容
- 追加で深掘りされた内容
- 推薦書、論文、プレゼンなどの提出資料
- 自分が不合格の原因だと感じていること
これらを照らし合わせることで、次に必要なのが何であるのか見えやすくなります。
一方で、自分の回答や提出資料を一人で確認しても、評価者からどのように見えた可能性があるのか判断しにくいこともあります。
当相談室では、前回の質問や回答、提出資料、会社からのフィードバックを確認し、優先して見直す内容を検討する再受験サポートコースをご用意しています。
本コースは、不合格理由を断定するものではありません。また、回答文の完成や模擬面接はコースに含まれていません。
振り返りと個別の分析を通じて、次回に向けて何を変える必要があるかを明確にし、その後に必要な対策を選べるようにするための支援です。
まとめ
昇格試験で本人が強く感じた問題と、次回に向けて優先して見直す内容は必ずしも同じではありません。
緊張や説明力だけでなく、判断理由、周囲への働きかけ、上位職としての役割理解、組織への貢献まで振り返ることで、次に必要な準備が見えやすくなります。
大切なのは、不合格理由を言い当てることではなく、前回の試験から得られる情報をもとに、次回までに何を変えるのかを明確にすることです。
