はじめに
「昇格試験は時代遅れではないか」
「形式的な試験で、人の価値が測れるのか」
働き方や価値観が多様化する中で、こうした疑問を持つ人は少なくありません。実際、管理職にならない選択や、専門職としてキャリアを築く道も一般的になってきました。
それでも多くの企業が、今なお昇格試験という制度を維持しています。それは単なる慣習ではなく、人材登用を行ううえでの合理的な理由があるからです。
この記事では、試験運営や面接官の立場を経験してきた視点から、企業が昇格試験を行う理由と、その制度が受験者にもたらす意味を整理します。
昇格試験のよくある悩みと不安の乗り越え方については以下の記事でまとめていますので、あわせてお読みください。
👉 昇格試験のお悩み相談まとめ
昇格試験が「時代遅れ」と言われる背景
昇格試験に対して違和感を覚える背景には、いくつかの時代的な変化があります。
- 管理職=正解ではないという価値観の広がり
- 年功序列から成果・役割重視の人事制度への移行
- 業務内容が複雑化し、短時間評価への不信感が強まっていること
こうした状況を見ると、「試験という一律の方法で判断するのは古い」と感じるのも自然なことです。そして、多くの受験者が昇格試験に対して「意味がない」「つらい」「もう無理かも」と感じる場面を経験しています。
こうした気持ちの整理については、以下の記事で詳しくまとめていますので、あわせて参考になさってください。
👉 昇格試験が「意味ない・つらい」と感じたときの向き合い方
企業が昇格試験を行う4つの理由
受験者が昇格試験に戸惑いを感じる一方、企業側は「完璧な評価方法は存在しない」ことを理解した上で、現実的に機能する制度として昇格試験を位置づけています。
ここでは、企業が昇格試験を行なう4つの理由を解説します。
適材適所を実現するため
昇格試験は、単なる知識テストではありません。企業は、各等級に求められるスキルや適性を持った人材を見極める場として活用しています。
例えば、優秀なプレイヤーが必ずしも優れたマネージャーになれるとは限りません。
管理職には、チームをまとめ、部下を育成し、組織の成果を最大化する能力が求められます。試験を通じて、その適性を客観的に判断することで、企業は「適材適所」の人事を実現しようとしているのです。
公平性・納得性を担保するため
もし昇格試験がなかったら、どのように管理職を決めることになるでしょうか?
「上司に気に入られたから昇格」「年功序列で自動的に昇格」といった不透明な基準では、社員の納得感を得るのは難しくなります。
そのため、多くの企業は公正な評価基準を設け、試験によって昇格の基準を明確にすることで、不公平感をなくそうとしています。昇格試験があることで、「なぜあの人が昇格したのか?」という疑問が生まれにくくなり、組織のモチベーション維持にもつながるのです。
受験者の成長を促進するため
多くの企業では、昇格試験を「合否を決める場」だけでなく、次の役割に向けて成長を促すプロセスとして設計しています。
試験に向けて業務知識を復習したり、マネジメントの勉強をしたりすることで、仕事に対する視野が広がります。また、論文や面接準備を通じて自分の仕事を振り返り、組織視点で考える力を養うこと自体が育成機会として位置づけられています。
合否に関する説明責任を果たすため
昇格・非昇格の判断には、本人への説明責任が伴います。試験結果や評価コメントがあることで、「なぜ今回は見送られたのか」「次に何が求められるのか」を伝えやすくなります。
また、受験者を推薦した部署や現場の上司にとっても結果のフィードバックは今後の育成の観点から非常に重要となります。根拠が明確であることは組織全体の信頼にもつながります。
昇格試験を「理不尽な関門」として捉えると、準備の方向性が定まらず負担感が大きくなりがちです。
一方で、企業が試験を通じて見ているのは、次の等級・役割で発揮できる行動や判断の再現性です。
この視点を理解すると、「面接で何を語るべきか」「論文で何を軸に書くべきか」が自然と絞られてきます。制度の意図を知ることは、対策をシンプルにする近道でもあります。
受験者にとっての昇格試験のメリット
昇格試験はネガティブに捉えられることもありますが、受験者にとっても大きなメリットがあります。ここでは、昇格試験を受けることで得られる主なメリットを3つ紹介します。
期待される役割が明確になる
昇格試験をきっかけに、「自分は次にどんな役割を期待されているのか」を整理する機会が生まれます。これは、日常業務ではなかなか言語化されない部分です。
実務に直結するスキルが磨かれる
論理的に考える力、伝える力、組織視点で課題を捉える力。これらは試験対策だけでなく、実際の仕事にも直結します。合否に関わらず、準備を通じて得られるものは少なくありません。
キャリアと処遇に影響する判断材料になる
昇格は、裁量や責任範囲、報酬に影響します。
また、昇格試験への取り組みや結果は、企業が今後受験者にどのような役割を任せるかを考える際の一つの材料になるため、受験者が自分の希望やキャリアプランを伝えるいい機会にもなります。
対策は「形式」より「一貫性」が重要
昇格試験では、テクニックよりも日常の働き方と、試験で語る内容に一貫性があるかが重視されます。試験の流れや準備の進め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
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とはいえ、「自分の整理の方向性が合っているのか」「面接官に伝わる内容になっているのか」を一人で判断するのは簡単ではありません。
試験制度や評価の考え方を踏まえたうえで、現状整理や準備の方向性を確認したい方は、無料カウンセリングもご利用ください。
まとめ
昇格試験は、決して万能な制度ではありません。
それでも多くの企業が続けているのは、人材登用を行ううえで現実的に機能している仕組みだからです。
制度の意図を理解することで、試験への向き合い方や準備の仕方は大きく変わります。「なぜ行われているのか」を知ることが、昇格試験対策の第一歩になります。
